住宅ローン控除の見直し案について解説!2022年度から実施される?
現在、年末の住宅ローン借入残高の1%が所得税から控除される「住宅ローン減税」のしくみ。2020年12月3日に、この内容が改正されるかもしれないと報道されました。
今回は改正案の内容について詳しく解説します。控除額が大きく減る方が多いので、要チェックです。
住宅ローン控除改正で控除額が大きく変わる
現在進められている改正の内容はこちらです。
【現行】
「年末残高の1%」が所得税から控除される
【改正案】
「年末残高の1%」もしくは「年間支払利息」のどちらか低い方が所得税から控除される
現在は超低金利時代。年間の支払利息が非常に少ないため、この改正で控除額が大きく減ってしまう可能性が高いのです。
住宅ローン控除改正でどのくらい控除額が変わる?
では実際にどのくらい控除額が減ってしまうのか、シミュレーションしてみましょう。
【シミュレーションの条件】
・年収 800万円
・住宅ローン借入額 4,000万円
・年利 0.5%
・借入期間 35年
・控除期間 10年(入居時期は令和3年1月以降)
現制度での控除額
まず現行の制度「年末残高の1%」で控除額を計算してみましょう。
年末残高 |
控除額 |
|
1年目 |
3895万円 |
39万円 |
2年目 |
3789万円 |
37万円 |
3年目 |
3683万円 |
36万円 |
4年目 |
3577万円 |
35万円 |
5年目 |
3470万円 |
34万円 |
6年目 |
3362万円 |
33万円 |
7年目 |
3254万円 |
32万円 |
8年目 |
3146万円 |
31万円 |
9年目 |
3037万円 |
30万円 |
10年目 |
2927万円 |
29万円 |
合計336万円 |
このとき初年度の控除額は約39万円。10年間で約336万円が所得税・住民税から返ってくる計算になります。
新制度での控除額
次に、支払い利息から控除額を計算してみます。
年末残高の1% |
支払利息 |
|
1年目 |
39万円 |
19万円 |
2年目 |
37万円 |
19万円 |
3年目 |
36万円 |
18万円 |
4年目 |
35万円 |
18万円 |
5年目 |
34万円 |
17万円 |
6年目 |
33万円 |
17万円 |
7年目 |
32万円 |
16万円 |
8年目 |
31万円 |
16万円 |
9年目 |
30万円 |
15万円 |
10年目 |
29万円 |
14万円 |
合計169万円 |
このシミュレーションでは「年末残高の1%」より「支払利息」の方が毎年少ない金額です。そのため初年度だけでも差額は20万円。10年間で167万円も少なくなってしまいます。
現行の制度 |
新しい制度 |
差額 |
|
初年度の控除額 |
39万円 |
19万円 |
20万円 |
10年間の控除額 |
336万円 |
169万円 |
167万円 |
なぜこのような見直しが行われるのか?
ここまで見てきたとおり、これからローンを組んで住宅を購入しようという方にとって、今回の改正案はいわゆる「改悪」といえます。なぜこのような見直しが検討されることになったのでしょうか。
現状のルールでは、住宅ローンの支払額を控除額が上回ってしまう状況です。つまり住宅ローンを金利1%未満で借りられるなら、本来はローンを組む必要がない人まで、ローンを組むことになります。
また控除の上限金額までなるべく多く住宅ローンを組み、控除が終了する10年後(もしくは13年後)に一括繰り上げ返済する…というのが最も得をするシステムにもなっています。
このルールは低金利時代には合わないと会計検査院から問題視され、「支払利息が借入残高の1%未満のときは、支払った利息分のみを控除する」という今回の見直し案が浮上しました。
住宅ローン控除制度見直しに関する注意点
2022年度に見直す方針
先ほどの「年末残高の1%or支払利息分まで」という住宅ローンの控除額は、2022年度から見直される方針です。つまり、2021年度はこのルールが取り入れられません。来年は住宅を買うなら、お得な年になるといえそうです。
2021年度から13年間の住宅ローン控除を2年延長
また、2021年度の改正では、13年間の住宅ローン控除が受けられる特例を2年間延長するという案も浮上しています。これも非常に嬉しいニュースですね。
2021年度から対象物件を50㎡→40㎡以上へ
これまで住宅ローン控除の対象物件は、面積50㎡以上の物件でした。しかし、2021年度からは「面積40㎡以上」に緩和される案が出ています。
面積40㎡というと12坪程度。これは主に独身やDINKSなど、狭めの物件を購入される方にとって耳寄りな情報です。
まとめ
【2022年度改正点】
・借入残高の1%or支払利息の少ない方が所得税・住民税から控除される案
【2021年度改正点】
・13年間の控除が受けられる特例の2年延長案
・対象物件を50㎡以上→40以上へ緩和する案
住宅ローンを金利1%未満で借りる場合、控除額が大幅に減る可能性があります。この改正案は適用されるとしても2022年度からなので、住宅を購入されるなら2021年内に入居できるよう早めに検討されると良いかもしれません。
今回お伝えしたのはあくまでも「予定」です。また詳しい情報が発表され次第、情報追記します。